ポプリ
「……!?」

 硬い胸に顔を埋める羽目になったシオンは、驚きに目を丸くした。父の大きな手は、シオンの太陽色の髪をグリグリと撫でまわす。

「グリフィノー家流お仕置術! 思い知れ!」

 グリグリと撫でまわされた挙句、ぶちゅー、と、頬に熱烈に接吻を受けた。

「きゃあああああ!」

 思わず悲鳴が出た。

 男子らしからぬ悲鳴だ。

「や、やめ、やめろ!」

「阿呆が! 親の子への愛情、その身を以て思い知れ!」

「ヒイイイ、嫌だ、助けて、せめて母上にして!」

「野菊やシャンリーじゃご褒美にしかなんねぇだろうが!」

「いや、ちょっとマジでやめて! ぎゃああああああ!」



 グリフィノー家流お仕置術。

『我が子がオイタをした場合は、大いなる愛情を以て叱るべし』

 もちろん、過去にシンも、この方法でフェイレイに叱られた経験がある。

 幼い頃ならば喜ぶところだが、もう成人間近の息子には本当に酷なお仕置である。父親としても相当に覚悟が必要なお仕置方法である。惨い。

 家族間でのキスは挨拶とはいえ、あまりにも熱烈過ぎるそれは、相当に効いた。

 それでも、耳元で「良く守れたな、偉いぞ」と囁かれれば、笑みも零れた。





 更に時が経ってから、シオンは父から提案を受ける。

「お前、グリフィノーを継ぐ気だろう? それなら仕事を頼まれてくれないか」

「仕事?」

「父さんの……じいちゃんの、手伝いだ」

 祖父、フェイレイの手伝い。つまり、魔族との橋渡し。世界の平和を保つ手伝いだ。

 世界中を旅して回り、その土地に住む人々の話を聞き、見守ってゆく。『勇者』としての後継を任されたのだ。

 禿鷲を改心させられなかったという気がかりもあるが、自由に動き回れるのなら、時々地球に行ってその様子を見守ることも出来るだろう。


 彼女は旅についてきてくれるだろうか。


 そんなことを思うシオンの深海色の瞳は輝いていた。














 本編第一部終了(?)記念のお話。

 シオンは勇者として、お嫁さんと一緒に世界中を旅します。皇太子のスパイ的な役割も担うことになりますよ。




< 274 / 422 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop