ポプリ
冒険者で野生児な勇者は、それを思いつくなり腰の後ろからユースティティアを引き抜いた。そして素早く柄同士を連結させて槍の様に変形させると、黒い鳥に向かって思い切り投げた。
剣がブーメランのように、風切り音を鳴らしながら鳥に襲い掛かる。
ヒットした。
ぼとりと黒い鳥が落ちた。
「やった」
仕留めた、とティーダは地面を蹴って落ちた獲物の元へ跳んでいく。
しかし地面に落ちていたのは鳥ではなかった。鳥のような翼を持った、人だった。
「魔族!」
ティーダは慌てた。
魔族は種族は違えど、人族とは友好関係にある。それを傷つけたなどと知れたら、せっかく曾祖父が築き上げた平和な世界が壊れるかもしれない──。
ここがミルトゥワではないことをすっかり忘れて、彼は黒い翼の人物に駆け寄った。
「ごめん、大丈夫? 俺、鳥だと思って──」
助け起こそうとした瞬間、黒い翼がばさりと羽ばたき、視界を遮った。真っ黒な髪に頭襟の乗せた同じ年くらいの少年が、紅い目に怒りの色を灯した。
「てめぇ何しやがる! 鳥だと? この臥龍と鴉天狗の息子である高貴な俺様をただの鳥と一緒にすんな!」
ティーダは目を瞬かせた。
「……鴉は鳥じゃないのか?」
「鴉天狗だっつの!」
くわっと犬歯を剥き出しにする少年に、ティーダは笑みを浮かべた。
「君、龍鷺郎?」
「は? なんでお前が兄貴の名前を……ん?」
少年の方も何か気づいたようだった。
「その人間なのに人間じゃない気配……グリフィノーか? シオンの弟か?」
「シオンは父さんだよ」
「息子か」
「うん。君は?」
「斑鳩(いかる)だ。龍鷺郎の弟だ」
ティーダはぱっと顔を輝かせた。
ここはほとんど未知の世界だが、両親から聞いていた名前を見つけたら、自分もこの世界に少しだけ馴染めた気がしたのだ。
剣がブーメランのように、風切り音を鳴らしながら鳥に襲い掛かる。
ヒットした。
ぼとりと黒い鳥が落ちた。
「やった」
仕留めた、とティーダは地面を蹴って落ちた獲物の元へ跳んでいく。
しかし地面に落ちていたのは鳥ではなかった。鳥のような翼を持った、人だった。
「魔族!」
ティーダは慌てた。
魔族は種族は違えど、人族とは友好関係にある。それを傷つけたなどと知れたら、せっかく曾祖父が築き上げた平和な世界が壊れるかもしれない──。
ここがミルトゥワではないことをすっかり忘れて、彼は黒い翼の人物に駆け寄った。
「ごめん、大丈夫? 俺、鳥だと思って──」
助け起こそうとした瞬間、黒い翼がばさりと羽ばたき、視界を遮った。真っ黒な髪に頭襟の乗せた同じ年くらいの少年が、紅い目に怒りの色を灯した。
「てめぇ何しやがる! 鳥だと? この臥龍と鴉天狗の息子である高貴な俺様をただの鳥と一緒にすんな!」
ティーダは目を瞬かせた。
「……鴉は鳥じゃないのか?」
「鴉天狗だっつの!」
くわっと犬歯を剥き出しにする少年に、ティーダは笑みを浮かべた。
「君、龍鷺郎?」
「は? なんでお前が兄貴の名前を……ん?」
少年の方も何か気づいたようだった。
「その人間なのに人間じゃない気配……グリフィノーか? シオンの弟か?」
「シオンは父さんだよ」
「息子か」
「うん。君は?」
「斑鳩(いかる)だ。龍鷺郎の弟だ」
ティーダはぱっと顔を輝かせた。
ここはほとんど未知の世界だが、両親から聞いていた名前を見つけたら、自分もこの世界に少しだけ馴染めた気がしたのだ。