ポプリ
 なかなかに難しい条件だが、ティーダはこの家に置かせてもらう居候の身だ。贅沢も文句も言うつもりはない。

「分かった!」

 そう、素直に頷いておく。

 そして心の奥底で、こっそりと思う。

 麗龍兄ちゃん、やっぱりシスコンなんだな──と。




「ユリアさん、もしかして、ロシアの人?」

 家の中を案内してもらいながら訊ねると、ユリアはぱあっと顔を輝かせた。

「あれぇ、分かりましたか~?」

「なんか、母さんに似た雰囲気があるから」

「ティーダくんのお母さまもロシア出身なんですってね~。すごい偶然~、親近感湧いちゃうなぁ。だから本当の弟が出来たみたいで嬉しいんですよ~」

 うふふ、と笑いながら、ユリアはティーダの頭を小さい子にするように撫でる。身長は彼女の方が小さいので、背伸びしている状態だが。

 姉がいたらこんな感じなのかなあ、なんて思いながら大人しく撫でられていると、背後から物凄い殺気が飛んできたので、即座にユリアから離れた。ユリアは「あらあら」と笑った。

「ライくん、ヤキモチですかぁ? 心配しなくても、私の一番はダーリンなのに~」

 うふふ~、とユリアが麗龍に擦り寄った。最初は口をへの字にしていた麗龍だが、すぐに破顔してイチャコラタイムが始まった。

 ティーダは『リア充爆発しろ』などとは思わない、平和な脳内の持ち主だった。

 仲良きことは美しきことかな。

 そんな感じにしばらく夫婦を見守る。


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