ポプリ
 道場から少し離れたところに建つ橘邸は、広々とした和洋折衷の邸宅である。本家や母の実家のような豪邸から見れば慎ましやかな家だが、四人家族の家の広さとしてはこれで十分と言える。

 風呂に入ってさっぱりした後は、母ペインのおいしい手料理を食べながらくつろぎ、満足してから勉強に取り掛かる。

 課題を終えて電気を消し、ベッドに入ったノエルはふう、と息を吐いた。

 生徒会副会長就任。

 彼にとっては青天の霹靂な出来事である。

 一見生徒会長は頼りないし、メンツを見ても不安が残る。

 けれども父の拓斗が言うには、丹下龍太郎という男は素晴らしい人物だという。

 自らが体を張って弱者を護り、言葉ではなく拳で熱く友情を語り、世話になった者には仁義を尽くす。そして、雨に濡れて震える子ウサギを見捨てることが出来ず、なけなしのお金を払って助けてやるような人物なのだ(一部空想あり)。

 だからその娘の龍乃もきっと、そんな人物に違いない。これからは生徒会長の自覚を持って、しっかりやってくれるに違いない。

 そんな幻想にも似た希望を抱き、ノエルは就寝するのであった。









 龍乃一味本編に沿った番外編はここらからになります。




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