ポプリ
「ティナ……じゃない、サラマンダー、よろしく」
いつもの癖でつい故郷の精霊の名を呼んでしまい、慌てて地球の精霊名に言い換える。現れた蜥蜴に乗った赤い髪を逆立てた少年は、《次は間違えんなよ!》と怒鳴りながらティーダの首元に張り付いた。薄い炎の膜が体全体を覆う。これで寒さは凌げる。
麗龍の気配はしばらく中華街にあった。夜中にこっそり飲みにでも行っているのか、とも思ったが、気配はすぐに中華街を抜けた。どんどん街の中心部から離れていく。
一体どこへ行くのか。
人目を避け、まだ煌々と明かりの灯る中華街のアーケードの上から、住宅の屋根から屋根へ跳びながら追いかけていると。
ふいに、麗龍の気配を見失った。
「あれ」
おかしいくらいに唐突だった。尾行に気付かれたのだろうか。自分も気配を絶っていたはずだが、完璧ではなかったのだろうか。
「どっちだ」
街灯の明かりも届かない路地裏に降り立ち、しばらく走ってみる。
やがて目の前には朱い鳥居が見えてきた。鎮守の森に囲まれた静かな闇の中、不気味に浮かび上がる朱塗りの鳥居は、ずっと奥の方まで続いている。
ここをくぐったら違う世界に迷い込みそうだ。
そんな感想が出てきそうな、不思議で不気味な光景だったが、ティーダはそれよりも気になる存在を見つけていた。
鳥居の上にちょこんと座る、赤いポンチョに黒いゴスロリ服を着た少女を。
「……ルナ?」
それはクラスメイトのルナ=ツェペリだった。
いつもの癖でつい故郷の精霊の名を呼んでしまい、慌てて地球の精霊名に言い換える。現れた蜥蜴に乗った赤い髪を逆立てた少年は、《次は間違えんなよ!》と怒鳴りながらティーダの首元に張り付いた。薄い炎の膜が体全体を覆う。これで寒さは凌げる。
麗龍の気配はしばらく中華街にあった。夜中にこっそり飲みにでも行っているのか、とも思ったが、気配はすぐに中華街を抜けた。どんどん街の中心部から離れていく。
一体どこへ行くのか。
人目を避け、まだ煌々と明かりの灯る中華街のアーケードの上から、住宅の屋根から屋根へ跳びながら追いかけていると。
ふいに、麗龍の気配を見失った。
「あれ」
おかしいくらいに唐突だった。尾行に気付かれたのだろうか。自分も気配を絶っていたはずだが、完璧ではなかったのだろうか。
「どっちだ」
街灯の明かりも届かない路地裏に降り立ち、しばらく走ってみる。
やがて目の前には朱い鳥居が見えてきた。鎮守の森に囲まれた静かな闇の中、不気味に浮かび上がる朱塗りの鳥居は、ずっと奥の方まで続いている。
ここをくぐったら違う世界に迷い込みそうだ。
そんな感想が出てきそうな、不思議で不気味な光景だったが、ティーダはそれよりも気になる存在を見つけていた。
鳥居の上にちょこんと座る、赤いポンチョに黒いゴスロリ服を着た少女を。
「……ルナ?」
それはクラスメイトのルナ=ツェペリだった。