ポプリ
 翌日、早朝五時に目を覚ましたティーダは、抱き枕にしていた愛らしいウサギのぬいぐるみ、権左衛門の頭をポンポンと叩いて起き上がった。

 この権左衛門、抱き枕として丁度いいサイズなのだ。ピカチュ○の実寸大とほぼ同じサイズなのだが、この大きさといい、丸さ加減といい、実によくフィットする。

 良いものを貰ったな、と思いながら庭に出て、念入りに体を解してから麗龍と組み手を行う。

 麗龍の動きの基本は龍娘流だが、そこにシステマの動きも入ってくるのは彼の父の覇龍闘の影響だ。

 緩急ついた動きに翻弄されること一時間半。

「二人とも~、お風呂に入ってご飯にしますよ~」

 キッチンの窓からユリアが声をかけることにより、朝稽古が終わる。 

 激しい運動により火照った体は、張り詰めた冬の空気にすぐ冷やされてしまうので、ユリアが熱いお風呂を用意してくれていた。

 裸のお付き合いは恥ずかしいです、なんて主張は無視されて、「冷えるから早く入って温まってきてね~」と、麗龍と二人でバスルームに押し込められる。一週間もすれば大分これにも慣れてきた。

 さっと汗を流してから、もうもうと湯気の立つバスタブに横に並んで浸かる。ざぶーん、とお湯が縁から溢れていった。

 その光景が何度見ても贅沢で、もったいないな~と思いながら、ティーダは口を開いた。

「麗龍兄ちゃん、昨日の夜どこ行ってたの」

「……やっぱり後を付けてたのはお前か」

 麗龍は絞ったタオルを頭に乗せ、ふう、と息を吐き出しながら後ろのタイル張りの壁に頭をつけた。

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