ポプリ
「そうしてね、言い忘れててごめんね~。あとね、鞄につけるストラップもあったでしょ~?」

「あ、権左衛門の」

「あれはルナちゃんからなの~。仲のいいお友達にあげてるみたいよ~。蒲公英ちゃんやすず先生ともお揃いみたい~。私も持ってるんですよ~」

「そ、そうだったんですか。それも後でお礼言います」

「うん、そうしてね~。あ、ライくん、ネクタイ曲がってる~」

 ティーダの前に紅茶を煎れたカップを置いた後、ユリアは新聞を読む麗龍に横から手を伸ばす。

「お、悪い」

 ネクタイを直してもらう麗龍はちょっと幸せそう。

 微笑ましい目を向けるティーダの前に、ぱさりと新聞が置かれる。その紙面の隅の方に、引っかかる記事を見つけた。

『天神地区にまたもヒーロー登場!』

 小さく書かれた記事の文面はこうだ。

 昨晩、泥酔して側溝に嵌って動けなくなっていたサラリーマン(53)が、テンジンライダーに助けられました。テンジンライダーに助けられたサラリーマンは、「助かりました。酔ってまったく力が入らなくて、脱出出来なかったんです。側溝には水が流れていましたし、このままここで凍死するのかな、なんて思っていたらテンジンライダーが来てくれまして。彼は優しく交番まで連れて行ってくれました。彼は私の命の恩人です。ありがとうございました。出来れば直接お礼を言いたいところですが……」と言っていました。相変わらず正体不明の正義の味方。彼は今夜も現れるのか──。



< 304 / 422 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop