ポプリ
(え、まさか、これ?)

 テンジンライダーとして天神地区を見守るヒーロー稼業をしていることを、ユリアに秘密にしているのか?

 確かに正義のヒーローは正体不明であるべきだが、恥ずかしいからなー、と麗龍は言っていた。

 ティーダは別に奥さんにくらい教えてもいいじゃん、と思った。

 正義のヒーロー、カッコイイのに。




 今日も学園は平和な一日だった。

 ルナの朝のふらつき具合を心配したり、奏楽が大勢の女の子を引き連れて廊下を歩いているのを目撃したり、龍一郎と休み時間に軽く組み手をしてみたり、蒲公英の和食弁当に興味をそそられたり、すず先生が血の滴るお肉にかぶり付く姿に驚いたり。

 どこかで爆発が起きていたリ、鬼族の男子たちが乱闘していたりと、平和な一日だった。

 そうして一日を終え、帰路についていると。

 どこからか女性の悲鳴が聞こえてきた。

 ティーダは素早くその声が聞こえてきた方へと走る。住宅街を抜けた先にある河川敷で、複数のいかにも怪しい出で立ちの男たちが女性を囲んでいた。

 今にも女性に襲い掛かりそうな男たち。ティーダはユースティティアを手に、土手から飛び降りようとした。

 だが足を止める。

 微かに銃声がした。直後、男の体が弾け飛ぶようにひっくり返る。銃弾は次々と男たちを吹き飛ばし、やがてすべてが草むらに倒れ伏した。

 女性がペタリと河川敷に座り込む。ティーダはそれを助け起こそうと駆け寄った。倒れた男たちは血塗れになってはいるが、命に別状はなさそうだ。しばらく目を覚ましそうにはないけれど。

 ティーダは女性に手を貸してやりながら、銃弾が飛んできた方向を見た。

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