ポプリ
そんな時、欄干にうっすらと雪が積もる橋の真ん中で、ある少女と出会った。
ふわりとした金色の髪の小さな少女は、ぼんやりと川の流れを見ているようだった。
けれどもそうではないことに近づいてから気付いた。少女ははらはらと涙を零していたのだ。
「な、なんだ、どうした」
息を切らしながら声をかけると、少女が振り向いた。真っ白な肌に、碧い瞳。寒さのせいなのか、真っ赤になった頬に涙が幾筋も伝っていった。
「──」
何か少女が言葉を発したのだけれど、麗龍には聞き取れなかった。その時になってやっと、麗龍は少女が『外国人』だと気づいた。この地区には珍しい色を持つ者が多いので、つい警戒心なしに話しかけてしまった。
「あ、えーと、なんだって?」
恐らく少女の方も麗龍の言葉が通じないのだろう。口をへの字にし、顔を歪めた少女の目からは更に涙が零れた。
「うわっ、ちょっと待て、泣くな! えーと、なんか分かる言葉ねぇかよ、ちょっと喋ってみろ!」
そんなことを言っても少女に解るはずもない。けれども、手をバタバタさせながら話す麗龍を見て何か通じるものがあったらしい。ぽつり、ぽつり、と何かを話し出す。
麗龍はそれを注意深く耳に入れ、どこかで聞いたことがある単語だ、と思った。
よく父や母が電話で誰かと喋っているときに話す言語。
「ロシア語!」
そう気づいたはいいが、麗龍はロシア語は喋れない。簡単な挨拶が聞き取れるくらいだ。
ふわりとした金色の髪の小さな少女は、ぼんやりと川の流れを見ているようだった。
けれどもそうではないことに近づいてから気付いた。少女ははらはらと涙を零していたのだ。
「な、なんだ、どうした」
息を切らしながら声をかけると、少女が振り向いた。真っ白な肌に、碧い瞳。寒さのせいなのか、真っ赤になった頬に涙が幾筋も伝っていった。
「──」
何か少女が言葉を発したのだけれど、麗龍には聞き取れなかった。その時になってやっと、麗龍は少女が『外国人』だと気づいた。この地区には珍しい色を持つ者が多いので、つい警戒心なしに話しかけてしまった。
「あ、えーと、なんだって?」
恐らく少女の方も麗龍の言葉が通じないのだろう。口をへの字にし、顔を歪めた少女の目からは更に涙が零れた。
「うわっ、ちょっと待て、泣くな! えーと、なんか分かる言葉ねぇかよ、ちょっと喋ってみろ!」
そんなことを言っても少女に解るはずもない。けれども、手をバタバタさせながら話す麗龍を見て何か通じるものがあったらしい。ぽつり、ぽつり、と何かを話し出す。
麗龍はそれを注意深く耳に入れ、どこかで聞いたことがある単語だ、と思った。
よく父や母が電話で誰かと喋っているときに話す言語。
「ロシア語!」
そう気づいたはいいが、麗龍はロシア語は喋れない。簡単な挨拶が聞き取れるくらいだ。