ポプリ
宴の熱と、盛夏の熱でしばらく頭がぼんやりとしていた。
そんな時だ。麗龍が少女を見つけたのは。
いつものように天神地区を一周している途中、夕日が川面を反射して煌いているのを視界の端に捉えながら走っていると、河川敷の草むらで麦わら帽子が動いているのが見えた。
目を凝らして見れば、それは小さな少女だった。ガサガサと草をかき分け、何かを探しているようである。
「何してんの?」
河川敷に下りて声をかけると、少女が顔を上げた。つばの大きな麦わら帽子のせいで目元が良く見えない。しかし白い頬に泥と草がついているのは見えた。
「あ……あー、なくした、デス。носовой платок」
「の、のさぼり?」
何だか良く聞き取れなかった。少女は小さな手で宙に四角を描いた。
「цветок」
描いた四角の隅を指差して、そう言う。
「ツヴィ、トー……ああ、花か。цветок?」
「ダーダー」
そうそう、と少女が頷いた。
「花っぽいヤツだな。よし、任せろ」
麗龍は屈んで草むらをかき分けた。それを見て少女が「アリガト、ゴザイマスー」と頭を下げ、そして自分も屈んで草むらを這って歩いた。
そんな時だ。麗龍が少女を見つけたのは。
いつものように天神地区を一周している途中、夕日が川面を反射して煌いているのを視界の端に捉えながら走っていると、河川敷の草むらで麦わら帽子が動いているのが見えた。
目を凝らして見れば、それは小さな少女だった。ガサガサと草をかき分け、何かを探しているようである。
「何してんの?」
河川敷に下りて声をかけると、少女が顔を上げた。つばの大きな麦わら帽子のせいで目元が良く見えない。しかし白い頬に泥と草がついているのは見えた。
「あ……あー、なくした、デス。носовой платок」
「の、のさぼり?」
何だか良く聞き取れなかった。少女は小さな手で宙に四角を描いた。
「цветок」
描いた四角の隅を指差して、そう言う。
「ツヴィ、トー……ああ、花か。цветок?」
「ダーダー」
そうそう、と少女が頷いた。
「花っぽいヤツだな。よし、任せろ」
麗龍は屈んで草むらをかき分けた。それを見て少女が「アリガト、ゴザイマスー」と頭を下げ、そして自分も屈んで草むらを這って歩いた。