ポプリ
「麗龍、おうちは少し遠いけど、いつでも遊びに来てね。お姉ちゃん、麗龍の顔が見れないととっても寂しいから……」

 ね、と顔を覗き込んでくる姉に、麗龍は歯を食いしばって顔を上げた。

「ちっ、仕方ねぇから遊びに行ってやるよ、めんどくせぇけどな!」

「うふふ、うん。待ってるね」

 嬉しそうに微笑む花龍に、麗龍はまた泣きそうになった。そこへ、重苦しい声が降ってくる。

「貴様は花龍の弟だからな。特別に歓待してやろう」

 本当に歓迎してくれるのかもしれないが、とてもそうは思えない地底から響いてくるような恐怖の声に、涙も引っ込んで背筋が凍り付いた。



 花龍は大学進学が決まっている。将来、学園長であるヴラドを支えるために、教員免許や秘書になるための資格を色々と取るのだという。

 子どもは卒業後かなあ、なんて両親に話しているのを聞いた。

 両親や祖父母もそれがいいだろう、なんて話していた。

 そうか、俺、おじさんになるのか。

 そんな未来のことをぼんやりと思っていたら。


 急にその時はやってきた。



「あのね、赤ちゃん、出来たの」

 少し照れ気味に、花龍がそう報告をした。

 結婚式から二か月しか経ってないというのに、驚き桃の木山椒の木。

 大学はどうするんだとか、教師のくせに学生に手を出すとはどういう了見だとか、色々怒号が飛び交ったけれど、最終的には、

「赤ちゃん、楽しみだね」

 と満面の笑みになって落ち着いた。

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