ポプリ
 そんな彼を見て、ユリアも眉尻を下げる。

「あ、じゃあ」

 ユリアは買い物袋からリンゴを取り出した。

「これ、お姉さんにあげますデス。きっと食べやすいのデスー」

「え、いいのか?」

「ハイ。麗龍くんにはいつも助けていただいてマスから、お礼なのデスー。お姉さん、早く良くなりますように」

 差し出されたリンゴと、優しい笑顔。

 それを受け取ると、何だか心があたたかくなった。

「……ありがとう」

「どういたしましてー。あ、この袋、返さないといけませんね。えっと、すぐにおうちに帰って……」

「ああ、今度でいいよ。またすぐ会えそうな気がするし」

 そう言ったら、ユリアは嬉しそうに顔を輝かせた。

「ハイ! たぶん、しばらくはここにいますので、また、会えると思いマス」

「じゃあそん時に。リンゴありがとな」

「ハイ! お姉さん、元気になってね~!」

 ブンブンと手を振るユリアに、麗龍も軽く手を振って姉の元へ急いだ。


 ユリアに貰ったリンゴを、姉はおいしそうに食べてくれた。

 そのお礼をしようとユリアの姿を探したのだけれど、会うことが出来ないまま、年が明けた。




 そして二月。

 待望の赤ちゃんが生まれた。名前はルナ。少し癖のある黒髪に、翡翠色の瞳を持つ女の子だ。

 ベビーベッドに寝かせられた姪っ子は、小さな手をぎゅっと握り、たまにもこもこ動き、たまにあくびをし、そして大抵は寝ている。

 麗龍はその様子をじいい、と観察していた。

 不思議なことに、ずっと見ていてもまったく飽きないのだ。

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