ポプリ
 麗龍はとぼとぼと道を歩く。

 見るからに元気のない、俯いて背中を丸めた格好だ。

 仕方ないとは分かっていても、気分が落ち込む。思っていたよりもずっと、ルナや姉との時間は彼にとって癒しだったのだ。

「はぁ……」

 脳裏に浮かぶのは、姪っ子のかわいい笑顔。

 あの天使の笑顔をしばらく見れないなんて。世界はこんなにも光に満ち溢れているのに、俺にはもう、灰色にしか見えないぜ……。

 そんな心境で歩いていき、階段に足をかけたときだった。

《麗龍、上──!!!!!》

 ひゅうっと耳元で風が吹き、風の精霊シルフの叫び声が聞こえてきた。

「え?」

 世の中に絶望した顔で見上げると、目の前に金髪が迫っていた。

 金髪。

 ユリア?

 と、名前を思い浮かべた瞬間、その金髪が麗龍の顔面に激突した。

「っ……」

 目の前に火花が散った。

 まったくもって予想外の衝撃に、麗龍の体は後ろへと倒れた。

 一瞬意識が飛んだために、受け身が取れなかった。倒れた先はコンクリート。更にもう一人ぶんの体重が体に圧し掛かり、息が詰まった。

 もう痛いというか、なんというか、悶えるしかない。

《麗龍、平気~? 魔力ちょうだい、痛いの治すよ~!》

 傍でシルフの声がするが、鳩尾に衝撃を受けたので声が出せない。

「麗龍くん!」

 おい、ユリア。

「麗龍くん~!」

 なんでお前は、そう。

「いつもいつも、なんでこんな現れ方すんだよ……」

 声を絞り出すと、涙目になっているユリアの顔が見えた。

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