ポプリ
「これ、洗って返す」

「え、いいですよ~。差し上げますから~」

「……ああ、そりゃそうだよな」

 誰が人の血がついたハンカチを返して欲しいだろうか。麗龍は「ごめん」と呟いた。

「……あっ、いえ、そうじゃないんです~」

 ユリアは両手とともに首をブンブン振った。

「私の物を麗龍くんが持っていたら、その……また、会えそうじゃないですか~」

 えへへ、とはにかみながらそう言うユリアに、麗龍はきょとり、と目を丸くした。

「……ああ、うん」

 なんとなく照れる。

 互いにそんな風なので、会話らしい会話もないままに時が過ぎていった。

 そんな微妙な空気ではあったけれど、ユリアと一緒にいる間は、ルナと姉に会えない寂しさが和らいでいたのだ。



 
 家に帰ってから、血だらけのハンカチを洗濯した。

 洗い方が拙かったのか、ちょっとだけシミが残ってしまった。これはもう使えないな、とは思うのだが、『持ってたらまた会えそうだ』と言っていたユリアの笑顔を思い出し、そっと、ポケットに入れてみたりした。

 そして、借りたものは返さなくては、と思い立つ。

 このハンカチはもう使えないので、買うしかない。

 でも女の子用のハンカチなど、どのようなものを選んだら良いのか分からない。

 悩んだ末、非常に不本意ではあるが、従姉に相談することにした。


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