ポプリ
「ううん、元気なんだよ。元気に見える。リプニー姉上が兄上と一緒に世界を回るようになったから、ティーダの面倒見てくれてたりするんだ。元気なんだよ、うん。でも……なんか……」

 力のないシャンリーの様子からは不安が見て取れた。

 元気があるのに、不安になるとはどういうことか。

「……じゃあ、ちょっと、会いに行ってみようかな」

 教えを乞うことは一旦置いておいて、一度リディルに会いに行ってみよう。

 麗龍はそう思った。



 麗龍のもう一人の祖母、リディアーナ=グリフィノーは、ミルトゥワの先代惑星王である太上皇の妹だ。その魔力と質の高さはユグドラシェル随一で、一族内で彼女は神聖視されている。

 その理由は、勇者フェイレイ=グリフィノーとともに世界に平和をもたらした功労者であるから。

 尊きユグドラシェルの血縁であるから。

 そして。

 神殿にも知らせていない、ユグドラシェル一族のみに伝えられている、彼女の真実のために。



 麗龍が訪ねて行ったとき、リディルはリザ=ユグドラシェル城の、人気のない静かな中庭にいた。

 穏やかな風に庭木が葉擦れの音を響かせる中。大木に背を預けるようにして地面に座った彼女は、ティーダを膝に乗せて、優しいまなざしでその眠りを見守っていた。

 その周りを、碧色の小さな光がふわり、ふわりと飛んでいる。

 一瞬、精霊たちだと思った。

 けれどもそんなはずはなかった。

 ミルトゥワには今、小さな精霊はいないのだ。彼女たちはみんな眠りについている。

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