ポプリ
「むむむ」

 先程の倍の数が現れた。

 もしかしなくても、これは。

《シャンリー、麗龍の方に新手が行ったぞ》

 彼女の影の中から、闇の精霊シェイドの声がする。足止めされている。ということは、あちらに“本体”が向かっている可能性が。

「……マズったかな」

 チラリと、麗龍とユリアが逃げて行った方へ視線をやる。





 朱い鳥居が連なる、鎮守の森に囲まれた静かな神社へと逃げ込んだ麗龍とユリアの前に、新たに黒いスーツの男たちが現れていた。

「先程の方はっ……」

 ユリアがシャンリーの身を案じる。

「心配すんな。アイツは大丈夫だ。こいつらは別動隊だろう。……術者本体を叩かないと駄目っぽいな」

 麗龍はユリアを下ろして背後に庇った。

「……巻き込んでしまって、すみません」

「ホントにな。お前、何なんだよ。狙われる覚えがあんのか」

 スーツの男が飛びかかってきたので、懐に入り込んで鳩尾に掌底を叩き込んだ。人と違って軽い。吹っ飛んだ男は爆発し、目玉のついた黒い呪符が現れる。麗龍はそれを捕まえた。

「おい、お前。視えてんなら応えろ。コイツに何の用があるんだ」

 黒い呪符は『ギギィ』と苦しげな声を上げた。

 そこへ他の男たちが突っ込んできたので、後ろの男を後掃腿で転ばせ、その横から突っ込んできた男二体に旋風脚、更に身体を捻り、ユリアに襲い掛かろうとしていた男に縦回転を加えての踵落としを喰らわせる。

 やはり手応えがない。ただの傀儡だからだろうか。それにしては嫌な感じがするのだ。倒すたびに身体中に穢れた粘着質な気を浴びる。そういう穢れた気はユグドラシェルの血が吹き飛ばしてくれるけれど。

 傀儡を操る術者は相当な手練れだ。それと麗龍一人で対峙するのはマズいかもしれない──。

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