ポプリ
 そんな風に言い合いをしていても、シャンリーはどこか元気がない。

「……お前、どうしたんだよ。腹でも壊したのか? そんなカッコばっかりしてるから……」

 と、年々際どくなっていくビキニアーマーを見る。

 身長は伸び手足も長くなって、女性らしいくびれも見え始めた成長期。シャンリーのセクシーな恰好は男子生徒たちの心のオアシスとなっていた。

 麗龍も年頃なので、柔らかそうな肌が隣にあると、色々と思うことがないわけではない。

 しかしどちらかと言うと、裸同然の恰好でうろつくことで誰かに襲われたりしないかとか、風邪を引いたりしないかとか、そういう心配の方が大きい。

 もちろん彼女がとても健康で、暴漢などプティ・ランスロットの錆にしてしまうくらいに強いということは知っているのだけれども。

 シャンリーは麗龍にとって姉のような、妹のような存在であり、だからこそ家族を想う気持ちになってしまうのだ。

「……どうして乙女にお腹の具合を訊くのあんたは。いつだったかは『腹巻勇者』なんてからかってくれたよね」

 じとっとした目で見られるものの、麗龍はそんなことを言った覚えはなかった。忘れっぽいのだ。

「そんな昔の話をしてんじゃねぇんだよ。いつも元気の塊みたいなお前が、最近やけに大人しいなって話なんだけど」

「……それは」

 シャンリーは深海色の瞳を彷徨わせた。

 それから人差し指と人差し指を合わせて、唇を尖らせる。

「そろそろ、言わなきゃならないから緊張しちゃって。……来年の春には、15歳だから」

 麗龍とシャンリーの誕生日は4月28日。

 15歳の誕生日は、シャンリーにとって一生を左右する出来事がある。兄であるシオンも通った道。準成人の儀式と、婚約者の決定だ。

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