ポプリ
 インフィニティ・セクターが長い間追い続けていた狐を退治出来たおかげで、そこに所属している彼女や両親に時間が出来た……といったところか。

 そう当たりをつけたところで、ユリアが涙ぐんでいるのに気付いた。

「っ、なに」

 もしやアイスが嫌いな味だったか? と慌てだした麗龍に、ユリアはゆるゆると首を横に振った。

「すみません。私、麗龍くんにお礼を、言いたかったのです。今回はそれで、日本に来ました。……会えて良かったです」

「礼って、別に何も……」

「いいえ。あの狐は……お父さんの、仇、だったのです」

「え? いや、でも……」

 何年か前に、ユリアは両親の出張で日本に来ていると言っていた。だから両親とも揃っていると思っていたが。

 そういえば九尾を倒した後、ユリアは号泣していた。もしかしたら、そのせいもあって……。

「……いつ」

「あの年です。去年。麗龍くんに会った、何日か前に」

 だから、ありがとう、と。

 ユリアは零れ落ちた涙を拭いながら微笑んだ。

 麗龍は何と声をかけて良いのか分からず、ただ、痛ましげに彼女を見る。それでも何とか励ましたくて。どうにかしたくて無意識に触れたポケットが、カサリと音を立てる。

 この、皺くちゃになってしまったハンカチを。

 いや、それよりも、彼女に選んでもらった方が。

「……あのさ。連絡先、教えてよ」

 なんとか元気付けたくて。そうするには傍にいた方がいいような気がして。買い物でもしたら気が紛れるかと思って。

 そんな思考回路での、突然の質問となった。

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