ポプリ
ユリアはきょとり、と目を丸くした後、申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「教えられません……」
その答えに、どーん、と麗龍の頭の上に巨大な岩が乗っかる幻影が見えた。
「あっ、違うのです! 麗龍くんを信用していないとか、そういうわけではなくて! ええと……私、時々家が変わるのです。だから……」
「じゃあ俺のを教える」
「それも駄目です~」
「……駄目なのか」
「えっと、その、私のようにどこの誰かも知れない者に、簡単に連絡先を教えてはいけないと思うのです~」
「……」
ああ、そうか、と麗龍は顔を顰めた。
インフィニティ・セクター所属の者は、身内を守るためにプライベートの連絡先を誰にも言わない、なんてルールがあったような気がする。
麗龍は両親がエージェントであるから、ユリアは訊けないのだろう。
そう言われれば、今までまったく連絡先を交換しなかったのも納得がいく。そのチャンスはいくらでもあったのに。
どうもユリアはインフィニティ・セクター関係者であることを秘密にしたいようだし、それならば、どうするか。
悩んでいると、ユリアの背後にブルネットの髪の美女が立った。ユリアの母だ。
「では、これをやろう」
ユリアの目の前にスマホが差し出される。
「お母さん~! え、スマホですか~?」
振り返ったユリアは驚きに目を丸くし、スマホと母とを交互に見やる。
「プリペイド式だ。払ってある額以上には使えないよ。ま、お前たちだけで使う分には十分だろうさ」
と、麗龍にもスマホを手渡す。
「え、あの、あ、こんにちは」
麗龍はスマホを返そうとしたが、その前に挨拶だ、と気づいて頭を下げる。
「教えられません……」
その答えに、どーん、と麗龍の頭の上に巨大な岩が乗っかる幻影が見えた。
「あっ、違うのです! 麗龍くんを信用していないとか、そういうわけではなくて! ええと……私、時々家が変わるのです。だから……」
「じゃあ俺のを教える」
「それも駄目です~」
「……駄目なのか」
「えっと、その、私のようにどこの誰かも知れない者に、簡単に連絡先を教えてはいけないと思うのです~」
「……」
ああ、そうか、と麗龍は顔を顰めた。
インフィニティ・セクター所属の者は、身内を守るためにプライベートの連絡先を誰にも言わない、なんてルールがあったような気がする。
麗龍は両親がエージェントであるから、ユリアは訊けないのだろう。
そう言われれば、今までまったく連絡先を交換しなかったのも納得がいく。そのチャンスはいくらでもあったのに。
どうもユリアはインフィニティ・セクター関係者であることを秘密にしたいようだし、それならば、どうするか。
悩んでいると、ユリアの背後にブルネットの髪の美女が立った。ユリアの母だ。
「では、これをやろう」
ユリアの目の前にスマホが差し出される。
「お母さん~! え、スマホですか~?」
振り返ったユリアは驚きに目を丸くし、スマホと母とを交互に見やる。
「プリペイド式だ。払ってある額以上には使えないよ。ま、お前たちだけで使う分には十分だろうさ」
と、麗龍にもスマホを手渡す。
「え、あの、あ、こんにちは」
麗龍はスマホを返そうとしたが、その前に挨拶だ、と気づいて頭を下げる。