ポプリ
《ごめん~! 止めようとしたんだけど~!》

 精霊が見えない者を止めようとしても、それは無理だろう。

 そんな風にどこか冷静に捉えながらユリアと視線を合わせる。ふわりとした金髪は片方だけ編み込んであり、いつもとは少し違い、大人びた雰囲気だった。

 その彼女が、哀しげな微笑みを浮かべて麗龍を見ている。麗龍がシャンリーを抱きしめる恰好でいるからだ。

「っ、いや、これは」

 麗龍が口を開くのと同時に、ユリアは踵を返した。柔らかな白いワンピースの裾がひらりと揺れる。

「……麗龍?」

 シャンリーは顔を上げ、麗龍の視線の先を見る。そしてひらりと舞いながら去っていく白いワンピースを見つけた。

「……あれ……ユリア、ちゃん?」

 ひくり、ひくりとしゃくり上げながらそれを見送った彼女は、はっとして麗龍を見た。

「麗龍、もしかして、今日!」

 良く見ればいつもよりお洒落をしている麗龍に、シャンリーは持ち前の勘の良さですべてを悟った。

「……あ、いや」

 顔を逸らした麗龍に、シャンリーは顔を歪める。

「ごめん! よりにもよって、こんな日に……早く追いかけて!」

「でも」

「いいから! あんたまで失恋しないで!」

 物凄い剣幕で怒鳴られて、麗龍は一瞬だけ怯んだものの、こくりと頷いた。

「後でちゃんと話訊いてやるから」

「私のことはいいから、早く追いかけろぉ~!」

 辛いだろうに、自分のことよりも麗龍のことを応援してくれる従姉に感謝しつつ、足を速める。

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