ポプリ
 そう言って肩を竦めた後、リプニーと歓談中のシャンリーに目を向ける。その姿は優しい兄のものだ。

「……心配いらねぇよ。アイツは強いからな。特に性格が鬼だ」

「はは、そうか」

 シオンは笑いながら、麗龍の蟀谷を拳骨で挟んでグリグリ攻撃した。妹を揶揄されたのでちょっとしたお返しだった。

「いで! いでででで!」

「ありがとな麗龍ー」

「言葉と行動が伴ってねぇ!」

 文句を言っているとリプニーがやってきてシオンを叱ってくれた。ざまあみろと舌を出したら、後で絞めるぞ、と笑ってない目で訴えられた。ティーダのお守りを引き受けることで、その場からトンズラする。


 ティーダを連れた麗龍はパーティ会場から少し離れて、あまり障害物のない、広場のようなところへやってきた。

 ちょこちょこと後ろをついてくるティーダの足取りはしっかりしている。さすが、物心つく前から徒歩で旅をしているだけはある。

「何して遊ぶ?」

 振り返って訊ねると、リプニーに良く似た青空の瞳がキラキラ輝いた。

「おにごっこ!」

「おー。じゃあ追いかけるから逃げろ」

「はーい!」

 たたっと広い庭を駆け出したそのスピードは、思わず顔を引きつらせるほど速かった。

(恐ろしい……なんだこの五歳児……)

 勇者の血の成せる業か。それともユグドラシェルの加護の強さか。さすがレジェンドとして語り継がれる一味のリーダーの息子ということか。

 何にせよ、速い。

 十を数えるくらいにはその小さな背は見えなくなっていた。

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