ポプリ
女王召喚もなんとか一人でやり遂げることが出来るようになる頃、麗龍は高等部一年に進級した。麗龍の受験を応援するシャンリーと早川家の面々の協力があってこその合格だった。
入学式当日。
新入生で溢れ返る高等部の廊下を歩いていると、メールの着信があった。
『ご入学おめでとうございます。麗龍くんの晴れ姿、早く見たいなぁ』
おめでとう、と喋るモコモコ羊のスタンプとともに送られてきたのは、ユリアからの祝いのメールだった。
『あとで写メ送る』
と送ったら、『待ち受けにします!』と返ってきた。
「やめれ」
スマホに向かってそう言った後、返事を打つ親指を彷徨わせた。
『いつ、会える?』
そう訊ねたいときは何度もあったけれど、結局はいつも訊かず仕舞い。頑張っているだろうユリアの負担になりはしないかと、躊躇していた。
自分が目標を達成したからといって、自分の都合で『会いたい』など、我儘にもほどがある。
でも。
もう、一年半。
そろそろ、本物のユリアに会いたい。
ほんの少しの葛藤のあと、タンタン、とスマホの画面をタップして文字を繋ぐ。
『俺、黒帯取ったよ。召喚も上手くなった。ユリアは? いつ来れる?』
祈るような気持ちで送信したメールの返事は、30秒で返ってきた。
『今』
「え」
新入生たちの賑やかな声に溢れた廊下に、たたた、と軽い足音が聞こえてきた。
それがどこか懐かしいもののような気がして、廊下をぐるりと見渡す。すると、背の高い男子生徒たちを割るようにして、ヴァイオリンケースを抱えた金髪の少女が現れた。
入学式当日。
新入生で溢れ返る高等部の廊下を歩いていると、メールの着信があった。
『ご入学おめでとうございます。麗龍くんの晴れ姿、早く見たいなぁ』
おめでとう、と喋るモコモコ羊のスタンプとともに送られてきたのは、ユリアからの祝いのメールだった。
『あとで写メ送る』
と送ったら、『待ち受けにします!』と返ってきた。
「やめれ」
スマホに向かってそう言った後、返事を打つ親指を彷徨わせた。
『いつ、会える?』
そう訊ねたいときは何度もあったけれど、結局はいつも訊かず仕舞い。頑張っているだろうユリアの負担になりはしないかと、躊躇していた。
自分が目標を達成したからといって、自分の都合で『会いたい』など、我儘にもほどがある。
でも。
もう、一年半。
そろそろ、本物のユリアに会いたい。
ほんの少しの葛藤のあと、タンタン、とスマホの画面をタップして文字を繋ぐ。
『俺、黒帯取ったよ。召喚も上手くなった。ユリアは? いつ来れる?』
祈るような気持ちで送信したメールの返事は、30秒で返ってきた。
『今』
「え」
新入生たちの賑やかな声に溢れた廊下に、たたた、と軽い足音が聞こえてきた。
それがどこか懐かしいもののような気がして、廊下をぐるりと見渡す。すると、背の高い男子生徒たちを割るようにして、ヴァイオリンケースを抱えた金髪の少女が現れた。