ポプリ
 そんなわけで、失恋が決定した女子生徒たちの阿鼻叫喚が響き渡るが、麗龍はまったく意に介さず──自分のせいだとは露程も気づいていない──、久しぶりに会えた彼女と穏やかな時間を過ごすのであった。

 そんな彼らを遠巻きに見つめる者たちは。

「おやおや、見せつけてくれるねぇ麗龍」

 未来の夫のご希望でビキニアーマーを卒業し、天神学園指定の制服を着用しているシャンリーがニヤニヤと笑ったり。

「義弟とはいえ、校内での破廉恥行為は許さんぞ。串刺しにしてやろうか」

 学園長が春から陰鬱な空気を醸し出して周囲を怖がらせていたリ。

「今日くらいは大目に見てやってください、お願いします」

 去年から学園長秘書として天神学園にやってきた花龍がそれを宥めたりと、穏やかな目で見守っていた。



 それから麗龍とユリアは学園中が公認するほど、仲の良いカップルとなった。

 順調に高校生活を送った麗龍は、日頃の行いの良さもあり、大学は推薦で体育科に入学した。ここまでは順調だったのだが──。

 4年間頑張って勉強したおかげで体育教師免許状は取得したものの、採用試験に落ちた。

 ちなみに、三回落ちた。

 免許があっても採用試験に通らなければ先生にはなれない。

 この世の終わりが見えるくらいに落ち込んだ。けれども落ち込んでばかりはいられない。あんまりユリアを放っておくと他の男に浚われてしまうかもしれない。ちゃんと職について、きちんとした形で彼女の人生を背負いたかった。

 頼ったのは、兄のような存在であった橘紫道。

「柊の会社なら紹介出来るかもしれない。でも、あそこは実力主義だから……仕事が出来ない人間はいらないよ?」

 父の玲音に良く似た、ほわりとする優しい笑顔で、中々に厳しいことを言われた。

 それでもいい、頑張ります、と麗龍は柊傘下の銀行の、その系列会社を紹介してもらった。

 そうして運よく採用され、無事、ユリアとともに生きる道を選んで。

 今に、至る──。




< 398 / 422 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop