ポプリ
「ただいまぁ~」

 学校から帰ってきたシオンが、元気よく転移魔法陣から飛び出してきた。

 ここはミルトゥワの皇都、ユグドラシェル。

 転移魔法陣は橘家の東屋とグリフィノー家(西の離宮と呼ばれるお城)の地下に設置してあり、シオンは毎日ミルトゥワと地球を行ったり来たりしている。もちろん管理は厳重にされていて、今日も飛び出してきたシオンに騎士たちが敬礼をしてくれた。

 それににぱっと笑いかけてから、地下の階段を上がっていく。

「お帰りぃ~」

 地下から上がってきたシオンは、パタパタと駆けてきた母、野菊に出迎えられた。それから手を繋いで家族がいつも寛ぐ居間へと向かう。

「今日の学校はどうだったぁ?」

「花龍がすごくかわいかった!」

「そっかぁ、良かったねぇ」

「うん! あとね、花龍にアルトゥルスで撃たれた!」

「そうなの? 大丈夫だったぁ?」

「ちょっと眠くなった!」

「あはは、そうなんだぁ。じゃあ夜もぐっすり眠れるかなぁ」

「そうかも!」

 あははぁ、と和やかな笑い声が響き渡る。その後で、シオンが少し顔を曇らせた。

「でも、なかなか花龍と仲良くなれないんだぁ。昔はいっぱい遊んだのに」

 居間で鞄を下ろしたシオンは、はぁ~、と溜息をつきながら今日抜く羽目になったダガーの手入れを始めた。

「俺の剣がランスロットで、花龍の魔銃がアルトゥルスだから、仲良くなれないのかなぁ?」

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