ポプリ
 今日も平和な天神に~

 やってきたよ、わるいやつ~

 きゃー、いやー、たすけて~!

 困っている人がいたら~、みんなで呼ぶよ~

 せーいーぎーのーみーかーたー

 てーんじーん ライダー!



「……」

 日曜日の朝、テレビから流れてきたその軽快な歌に、麗龍はコーヒーカップをごとん、とテーブルの上に落とした。

 ユリアから受け取ったばかりのカップの中には淹れたてのコーヒーが湯気を立てていた。それがひっくり返ってテーブルの上は大洪水。さーっと向こう側まで流れて行って、「あっちぃ!」と、ティーダの太腿に零れ落ちた。

「あらあら、たいへ~ん」

 ユリアが慌てて台布巾でティーダの足を拭こうとするものの、「自分でやります! 麗龍兄ちゃんが怖いんで!」と、ユリアから台布巾を奪い取った。

 しかしいつもならば、ユリアと戯れると怒る麗龍が何も言ってこない。

 なんだろう、と彼を見ると、ダイニングテーブルの横の壁にかかっているテレビに釘付けになっていた。

 ユリアが羊毛フェルトで作った小さな羊が二匹、テレビの上にちょこんと手を出した格好で乗っている。そんなちょっとメルヘンなテレビ画面に映っているのは、来週から始まるというヒーロー番組の宣伝だった。

 困っている人を放っておけない、心の優しいヒーロー。

 どこからともなく走ってやってくる、テンジンライダー。

 バイクに乗ってないのに何故ライダーなのか、不思議なテンジンライダー。

 ……どこかで聞いたことのあるヒーロー名だ。

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