ポプリ
「麗龍兄ちゃん、俳優になった」

 のか、と続けようとしたティーダは、即座に飛んできた拳を避けようとして椅子ごとひっくり返った。

「あらあら、たいへ~ん」

 慌ててユリアがティーダを助け起こそうとしたが、「大丈夫です! 麗龍兄ちゃんが怖いからお気になさらず!」と、自分で起き上がった。

 麗龍はジロリとティーダを睨み付けた後、またテレビに視線を向けた。

 テレビの中で次々と人助けをしていくテンジンライダー。その仮面を取った姿は、麗龍とは違う俳優だった。

「テンジンライダー、今度ドラマになるんですよねぇ」

 テレビに釘付けになった二人の後ろで、ユリアがのほほんと言った。

「知ってます~? テンジンライダーって、二号がいるんですよ~」

「……は?」

 麗龍は怪訝な表情でユリアを振り返った。

 そりゃそうだ。現実の方では二号など存在しないのだから。

「うふふ~」

 ……と微笑んだユリアは、どこから出したのか、テンジンライダースーツ(ピンク色)を取り出した。

「実は私で~す」

「ええええ!」

 ティーダが驚き叫ぶ。

 麗龍なんてユリアが何を言っているのか分からず、口をぽかんと開けた状態だ。

「スポンサーの橘さんからスタントマンを頼まれまして~。ドラマ化するにはやっぱりヒロインが必要だということで、現実にはいないんですけれど、二号が追加されて~」

「やっぱり橘の連中の仕業か! このドラマ化も!」

 麗龍、怒り心頭に立ち上がる。そしてスマホですぐに電話をかけた。

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