ポプリ
 それが本当ならとても嬉しいことだ。

 けれども兄は嘘をつくのが上手だから、ボクは慎重に兄の瞳を覗き込んだ。すると「本当だよ」と苦笑した兄に頭をくしゃりと撫でられた。

「最近弾いてくれないから寂しかったんだよ。リクエストを聞いてくれるかい?」

 その言葉に、ボクは力強く頷いた。

「うん、何がいい?」

「それじゃあ、パガニーニの『カンタービレ』をお願いしよう」

「分かったよ兄様、任せて」

 ボクは頷いて兄の後ろへと回り、久々に車椅子を押してあげた。

 昔兄に何があって、誰に贖罪しているのかまで訊く勇気はなかったけれど。少なくともボクのヴァイオリンが癒しだということが分かって良かった。

 その日は兄の心が少しでも休まるように。

 特に心を込めて音を奏でた。




 その後、兄との関係修復のアドバイス(?)をくれた龍一郎には、感謝の気持ちを込めて友情を謳った詩集を贈らせていただいた。

 彼は微妙な顔をしていた。こういうのが苦手だというのは知っている。あえてのチョイスだ。

 ボクはみんなの喜ぶ顔が好きだけれど。

 ちょっと困った顔をさせるのも好きみたいだ。











 奏楽の将来の夢はヴァイオリニスト。

 そこに兄の事業の手伝いが追加されました。





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