ポプリ
 シオンが学校から帰ってくると、居間のソファに色とりどりのドレスや儀礼用騎士服などがかけられていた。

「ただいまー?」

「あ、シオン、お帰りなさーい」

 くるん、と振り返った野菊は、背中の大きく開いた白いドレスを着ていた。宮中の女性たちは常から煌びやかなドレスを纏っているが、冒険者としても活躍している野菊がこのような格好をしているのは珍しかった。

「それどーしたの?」

「今日、ロッティのところに遊びに行ったら仕立て屋さんが来ててね、今度皇城で舞踏会があるから野菊も新しいの作りなさいって言われて。どんなタイプのドレスがいいか見てもらおうと思っていくつか借りてきたの。どお? 似合う?」

 テーブルに置かれていたネックレスを首に当て、ティアラを頭に乗せて微笑む野菊。

「うん、かわいーよ! お姫様みたい!」

「そお? ありがとー。シオンも新しいの仕立てるから、その辺の着てみてね。サイズ見ないといけないからー」

「はーい」

 鞄を床に下ろし、シオンはソファに並んでいる服の中から、小さいサイズの騎士服を手に取った。

 グリフィノー家は皇家に連なる家系なので、男子は皇宮騎士の儀礼用が正装となっている。黒い詰襟に金糸で豪奢な模様を描き、マントを羽織った格好がそれである。

 女子はあまり肌を見せないドレスが正装となっているが、最近の風潮ではあまり華美過ぎないものであれば良いとされる向きがあり、今は背中や腕を見せるのが流行りのようだ。一昔前はいかに胸を美しく見せるか、というのが主流だった。……流行らせたのは前者が野菊、後者が皇后ローズマリーである。

< 43 / 422 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop