ポプリ
「えっと、ごめんなさい……これ、あなたのですか?」

 訊ねると、少年がゆっくりと瞬きをした。

「ああ……すみません」

 低いけれど、ゆったりとした優しい声だった。怖い人ではなさそうでホッとする。

「チューリップの球根、植えるんですか?」

 花龍は少し背伸びをして、少年の持つ箱に球根を戻しながら訊ねた。

「えっと……ぶつかってしまったお詫びに、お手伝い、します……」

「花龍、手伝うの? じゃあ俺も手伝うよ」

 シオンもそう申し出たが、少年は無言だ。

「……だめ?」

 花龍が首を傾げてみると、少年はまたゆっくりと瞬きをした。

「………………ああ……突き飛ばしてしまい、申し訳ありません。……………怪我は、ありませんか……?」

「え、今頃聞くの?」

 シオンが訝しげに首を傾げた。



 灰の髪の少年は、小岩井冬樹と名乗った。死神で用務員の小岩井防人と、雪女である雪菜の息子である。通りで人の気配がしないはずだ。

 花龍、冬樹、シオンと並んで、花壇に球根を植える。

「これ、美化委員のお仕事。冬樹さん、生徒会の人ですか?」

「……………………はい」

 物凄くゆっくりと、返事があった。

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