ポプリ
「これをいつも身に着けているといいよ。そして見るたびに思い出すんだ。今日ここで、僕と語り合ったことを……『廊下を走っちゃだめなんだ』ということを……」

「わああ……ありがとうございます」

「ありがとうウサギ! 花龍とお揃い! やったぁー!」

 キーホルダーを受け取って、二人は大喜び。

 それを見て、綾小路もどこか満足そうだ。

「それでは僕は他の見回りに行くからね。さらばだよっ!」

 しゅたっ、と廊下の曲がり角に消えていく綾小路。花龍とシオンは笑顔で手を振りながらそれを見送った。





 廊下の角にて。

「や、やったよお兄様。かわいい子どもたちを危険から守ったよぉ!」

 綾小路を後ろから操っていた花は、達成感溢れる笑顔で兄に報告した。

「良くやった花、見事な演技だった」

「えへへ、これも『子どもたちを説得するなら綾小路でやるといいよ』ってアドバイスしてくれたお母様のおかげだねぇ」

「確かに母上の口添えあってのことだが、実際に説得したのは花だ。よくやったな。中学生になって花も成長したということか……」

「えへへぇ、そうかなぁ?」

「ああ」

 武は大きく頷いて、花の頭を撫でてやった。生徒会の一員としての役目を果たし、兄に褒められた花は超ご機嫌。




 後日。

 初等部組は廊下を走ることなく、日々を過ごしていた。

 廊下を走ることなく、追いかけっこをしていた。

 競歩並みというか、むしろ走ってるのと変わらないんじゃね? ってくらいのスピードで“歩いていた”。


 その光景を目撃した花は、持っていた綾小路をポトリと廊下に落とし、固まっていたという……。



 





「お、お兄様あああああ~!」

 花ちゃん涙目。





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