ポプリ
「怖くて声も出せねぇのかよ、おチビちゃんたちはァ」

 嫌な高笑いをしたヤンキーたちが、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま足を振り上げた。

「鼻垂れ小僧どもはママのお傍でオネンネしてなぁ!」

「──ウィスプ! 壁創って!」

 シオンは仕方ない、と光の精霊ウィスプの強靭な防壁を自分と花龍の周りに展開する。このヤンキーたちの脆弱な足では骨にヒビが入ってしまうかもしれないが、仕方ない。花龍を傷つけるよりはマシだ。

 そう、思ったのだが。

「ふん!」

 ヤンキーがウィスプの光の防壁を蹴る前に、黒刃がその足を受け止めた。刹那だ。

「貴様ら……まだ暴れ足りなかったのか……」

 ギロリ、と鋭い視線を向ければ、ヤンキーたちはひいっ、と情けない声を上げた。彼らはつい先程、この風紀委員におしおきされたばかりだったのだ。慌てて刀から足を退ける。

「こ、これは刹那の旦那ァ」

「いやいや、俺たちはただ、廊下を走ったら危ないんだよと、この子たちに教えてあげようとしていてですね……へへ」

「それは殊勝な心がけだな。ちゃんと言い聞かせてやれ」

「は、はいっ! お、お嬢ちゃんにお兄ちゃん、いい子は廊下を走っちゃいけないんだぞぉ~?」

「今みたいに人にぶつかると危ないからねぇ?」

「そうそう。さっきはね、もし怖い人にぶつかると大変だよって教えてあげるための演技でね……」

「怖かっただろう~? だから廊下は走らないでね?」

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