ポプリ
 強面のヤンキーたちが目尻を下げ、手もみしながら小さな子どもたちに言い聞かせる。

 そんなヤンキーたちを見上げ、花龍は「ほえ~」と気の抜けたような声を上げた。

「……お兄さんたち、教えてくれて、ありがとうございます。これからは気をつけます。ぶつかって、ごめんなさい……」

 ぺこり、と頭を下げる。

 それを見て、シオンも渋々頭を下げる。

「気をつけますっ」

「お、おうっ、気ィつけなっ!」

 引きつった笑顔でそう言うヤンキーたちに、花龍は笑顔を向けた。

「はぁい」

 素直な返事とほわほわな笑みを向けられて、ヤンキーたちはうっ、と身を引いた。いかん、こんなほわほわに長い間晒されていたら、ヤンキーとしての矜持が崩されそうだぜっ! ……と、蜘蛛の子を散らすように去っていった。

 それを見送り、刹那も月蝕を納刀する。

「……分かったか。今後は廊下を走ることも、スピードを出して歩くのも禁止だ」

 二人は素直に頷く。

 そしてシオンは目をキラキラさせながら刹那に詰め寄った。

「お兄ちゃん、すごいなぁ! ちゃんと怪我させないように出来るなんて! いっぱい修行しないとあんなこと出来ないよね! すごいなぁ!」

 あまりにも無邪気な視線に、機嫌の悪かった刹那の顔も少し和らぐ。

「フ……あの程度、『不殺』の琴月の剣客には造作もないこと」

「琴月? あれ、琴月って……」

「……琥珀おねーさまと、同じ」

 そのことに二人が気づいた、そのとき。

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