ポプリ
「いなくなりそう?」

「うん」

 花龍は頷いて、ココアをこくりと飲み込んだ。

 その不安そうな顔を見て、リィは考える。

 娘が不安に思う気持ちは良く分からない。しかし、『いなくなりそう』だと感じた覚えがリィにもあった。シンの手紙にも、彼が花龍に執着している様子は書かれていたので、気にはしていたのだが。

「……花龍とシオンは、私とシンみたいなものなのかもしれないね」

「ふえ?」

「うまく説明出来ないけど……花龍はシオンといると……」

 リィは花龍のマシュマロを温かいココアの中に浮かべて、スプーンでくるりと混ぜた。マシュマロがじわりと溶けて、形を崩していく。

「こんな風に、溶けて消えてしまいそうだと、思う?」

「……うん」

 花龍は目を丸くして母を見た。

 まさに、それと同じ感覚だった。それを理解してくれる母を、凄いと思った。

「私もね、小さい頃、そう思ってた」

「母上も?」

「シンとひとつだと思ってた」

 ほぇ? と首を傾げる娘に微笑みかけ、リィは続ける。

「くっついていると、とっても安心で……そのうち溶け合ってひとつになってしまうんじゃないかって、ね。同じ日に生まれた双子だから、そうなのかと思ってたけど……あなた達もそうなのなら、双子だからじゃなくて、同じ魂を分け合った『片割れ』だから、なのかもしれないね」

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