ポプリ
「その一、半径一メートル以内には近づかないこと。その二、追いかけてこないこと。その三、ぎゅーとかちゅーとかしないこと。以上を守っていただけたら、シオンと仲良くできそうです」

「……質問です」

「はい、なんですか」

「席替えで隣の席になったらどうしたらいいですか」

「う……。そ、その場合は特例としてきょかします。でも、私の領域を侵さないでください」

「んー、はい、分かりました。じゃあ、遠足のときとか、先生に手を繋いで歩きなさいって言われたらどうしますか」

「……て、手を繋いで歩くだけならきょかします」

「じゃあ、あともうひとつ。ずっと見ているだけならいいですか」

「……不快にならない程度ならきょかします」

「……お話は、してくれるんだよね?」

「お約束を守ってくれたら、きょかします」

「んー、じゃあいいよ。分かった。花龍との約束守る!」

 にぱっと笑うシオンに、花龍はほっとして笑みを浮かべた。

「じゃあ、しっかりとお約束を守ってね。仲良くしようね。よろしくお願いします」

「うん、分かった! よろしくお願いします!」

 にこにこ微笑み合った二人は、お行儀よく頭を下げあった。

 そこに、パンパンと手が鳴る。

「はーい、シオンくんに花龍ちゃん、授業が始まりますよ、席についてください」

 初等部の教師、丹下小夜先生の登場に、他のクラスメイトたちが自分の席へと移動している。シオンと花龍もそれに倣っていそいそと自分の席に戻っていった。

 小夜先生はその光景を微笑ましそうに見ていた。











 初等部組、これにて一件落着。






< 72 / 422 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop