ポプリ
「どうしたんだ、それ」

「母上の借りたの。かわいい?」

「かわいいも何も……」

 霸龍闘はしゃがんで、花龍の着ているシャツの裾をぴらっと捲り上げた。ピンクのハート柄のぱんつがチラリとお目見えした。

「やーん」

 花龍はちょっぴり恥ずかしそうに、両手でシャツの裾を押さえる。

「やーんじゃない、こら。なんで下に何も履いてないんだ? ちゃんとパジャマを着なさい。風邪引くだろ?」

「別に寒くないもん」

「風呂上りは最初はあったかくてもだんだん冷えてくんの。自分のパジャマどこにやったんだ? お着替えしなさい」

「やーん、父上とヘンタイするのー」

「はあ?」

「父上に喜んでもらうのー」

 Yシャツの裾をぴらぴらさせながら、花龍は訴える。

 霸龍闘は胡乱な目で娘を見た。

「どこからそんな知識仕入れてきたんだよ、ったく」

 溜息を吐きながらうがいを済ませると、花龍を抱き上げた。

「あのなぁ。そういうのは花龍がやっても効果ないの」

「……そうなの?」

「そう。花龍みたいなかわいい子はな、清楚な格好できちんと、だ」

「……父上も、きちんとが好き?」

「おう、好きだとも。母上を見てみろ。いつもきちんとしてるだろー?」

「うん、きちんと。……父上がそう言うなら、きちんとする。パジャマ着る」

「よーし、いい子だ」

 霸龍闘は花龍の頭を撫でてやり、着替えをさせるためにキッチンで後片付けをしていたリィに引き渡した。娘を抱き上げる、その彼女をじっと見て。

(…………俺のシャツ着せてみるか)

 割と真剣にそんなことを思ってしまう霸龍闘であった。









 やーん。




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