ポプリ
 まだまだ賑やかな宴が続く天神学園のクリスマステロ。飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎは、参加者の体力が続く限り続けられる。

 その催し物のプログラム確認を行っていたノエルは、トントン、と肩を叩かれて振り返った。妹のセレナであった。

「どうしたの?」

「兄さん」

 セレナは少し苦笑気味に、ノエルの持っている書類を奪い取った。

「日付が変わりました。後の仕事は私が引き受けますから……兄さんはパーティを楽しんできてください」

 そう言って微笑む妹に、ああ、とノエルは笑った。

「いいんだよ、仕事なんだから」

「でも、今日は……」

「いいんだよ」

 ノエルはセレナから書類を奪い返し、にこりと微笑んだ。そうして会場で楽しそうにはしゃぐ参加者たちを眺める。

「みんなが楽しんでいる姿が、僕にとって一番のプレゼントだからね」

「兄さん……」

 それは兄らしい答えで、セレナはますます彼を誇りに思ったのだが、でも、今日は。

「兄さん、それなら龍乃さんや武くんたちに話して、みんなでお祝いしてもらえばっ……」

「こら、セレナ」

 ぽんぽん、と妹の頭を優しく叩いて、ノエルは微笑む。

「今日は『クリスマステロ』。僕のことは内緒。いいね?」

 少し屈んで視線を合わせた兄の目は、優しいけれども頑固な目で。それを良く知っている妹は、唇を尖らせながらも頷くしかなかった。

「……はい」

「うん」

 もう一度ポンポンとセレナの頭を叩いて、ノエルは人々の集まる方へと歩き出す。その背中に向かって、セレナが叫ぶ。

「帰ったら母さんと一緒においしいケーキ焼きます。楽しみにしていてくださいねっ!」

 その声に、ノエルは肩越しに振り返り、優しく微笑んだ。









 クリスマスはノエルの誕生日でした。






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