ポプリ
 クリスマステロ終了後、差出人不明の小包が届いた。

 その中身を前に、固まっている人物がここにひとり。

「……」

 橘ノエル。

 龍娘流中国拳法を嗜む、真面目で優等生で心優しい少年である。

 彼の前には何の変哲も無いベージュの小包封筒と、苺。

 正確には苺柄パンツ。女物である。

「……」

 ノエルは固まっている。

 差出人不明の小包の中に入っていたのは、その苺パンツと、『ハッピーバースデー』と書かれたカードのみ。

「……」

 ノエルは固まっている。

 差出人は不明だが、その苺には見覚えがあったからだ。

「……」

 ノエルは目を閉じた。

 何故これが自分の元に届いたのか。誕生日のことは伏せていたはずだが、セレナがうっかり喋ってしまったのだろうか。そうするとこれは、プレゼントを贈ろうとしたうっかり者の持ち主が誤って送ってきたもの、ということになる。

 まさか本人が苺と分かっていて贈ってくるようなことはないだろう。だって彼女は普段のボーイッシュなイメージと違い、案外照れ屋で奥ゆかしい部分がある。そんな彼女が自ら送ってくることは絶対にない。

< 83 / 422 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop