ポプリ
 生徒会の仕事も休みに入ったので、亜鳥は家族とともに年末の大掃除に取り掛かっていた。

 とは言っても、やるのは亜鳥の子分である河童どもだ。昔父の鷹雅が、真夏の道端で皿が干からびそうになって倒れていた河童に水をぶっかけて助けてやったことがある。それ以来鷹雅は『兄貴!』と呼んで慕われ、亜鳥のことも『お嬢』と呼ばれ、付き従われている。

 この河童たちは、雪女の佐伯家に仕える豆狸一族のようなものである。豆狸一族──現在は七代目豆太郎が天神に生徒として潜入している──は今も影からこっそりと雪菜、そして息子の冬樹を支えている。あまり役には立っていないが。



「お嬢、天井の埃払い終わりやした!」

「ありがと。じゃあ次は床磨きよろしくね」

「へいっ!」

 頭にある立派な皿を輝かせながら、緑色の肌をした人の姿の河童たちが一斉に床の拭き掃除を始める。それを手すりに腰掛けながら眺めていた亜鳥は、生徒会室の掃除を思い出した。

(掃除もしたことのない妖怪に、よくもあんなことを)

 亜鳥はこのあたり一帯を治める鴉丸一族の頭領の娘。

 由緒正しい翼のある河童の末裔であるこの自分を、鴉丸の欠点を克服した完璧な翼のある河童であるこの自分を、よくも埃まみれにしてくれた。

 大体にして、あの連中は人使い、もとい、妖怪使いが荒いのだ。

 無理やり生徒会入りさせられるわ、掃除はさせるわ、居残りさせて書類整理手伝わせるわ。

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