ポプリ
『亜鳥っくす、お疲れ~。はい、これポッキーの差し入れー』

 悶々とした中にぽっと浮かび上がる、能天気なアホ毛のついた生徒会長の顔。

『ほい、ポテチ』

『ノエルっちに貰ったチョコ、亜鳥っくすにも分けてあげるねー』

 大きな目をした少年のような少女の屈託の無い笑顔が浮かび上がり、亜鳥は目を細めた。

「……ま、まあ、別にいいけど。掃除も暇つぶしには丁度いいわ」

 なんて呟き、腰に下げていたクリスマステロ限定五所川原キーホルダーを無意識のうちに手にする。

(そういえば、最近顔見てなかったわよね)

 手の中の五所川原を弄びながら、蛇眼を持つ龍のことを考える。


 アイツ、人を嫁にするとか言っておきながら、あんまり顔を出してくれないわよね。クリスマステロのときも散々待たされたし。

 釣った魚には餌をやらないタイプかしら。

 ……べ、別に釣られてなんかないけど!  鴉丸の発展のためには強い男が相手の方がいいから、話に乗ってあげただけなんだから!

 だってのに、アイツったら鴉丸の姫であるこの私を放ったらかしにし過ぎじゃない? ……まあ、あんまり臥龍に好き勝手されたら龍乃も困るだろうしね。別に龍乃を困らせるつもりはないから我慢するけど。

 でも……初詣もノエルに譲っちゃったし、冬休みが終わるまで会えないわけじゃない?

 ……べ、別に、寂しくなんかないけど。

 寂しくなんかないけど。

 ……ちょ、ちょっとだけ、顔見せても、いいんじゃないの……。

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