雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「いつからバイトしてんの?」


「高校入ってすぐ」


「ホールとか?」


「基本ホールだけど、人が足りない時はたまに厨房手伝ったり」


「九条が接客業とか、ちょっと意外」


「新太にも同じ事言われた」


「やっぱり!?」


 沈黙になるのが嫌で、帆鷹を質問攻めにした穂香だったが、ふとある事に気付いた。傘からはみ出している右肩がめちゃめちゃ冷たい。


「ねぇ……もうちょっと、アタシよりに傘差してくれてもよくない?」


「これ、俺の傘。そっちがもっと中に入れば?」


「あんまりくっついたら悪いと思って気を遣ってあげてんの」


「中崎でも気を遣うことあるんだ?」


「ちょっと! それどういう意味!?」


「ん? まんまの意味」


 そんな話をしていたら、いつの間にかもうファミレスの前。


「この傘、そのまま差して帰れよ」


「えっ? そしたらバイト帰りに九条が傘なくなるじゃん」


「適当に借りて帰れるから平気。じゃあな」


 帆鷹は傘を穂香に渡すと、ファミレスの中へ入って行き……穂香は嬉しさに顔を綻ばせながら歩き出した。
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