雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「何笑ってんだよ」


 ぶすくれる匡に千咲希が視線を向けると、雨が降っているというのに、その手には傘がない。


「雨降ってるのに、傘ないの?」


「汗もかいたし、チャリで濡れて帰るくらいどってことねーよ」


「そんな事したら風邪ひくよ? 自転車は置いてバスで帰りなよ。バス停まで入れてってあげる」


「んなの、いいって」


「ダーメ」


 千咲希は言い出したら聞かないところが昔からある。それを少なからず知っている匡は、しぶしぶ千咲希に従う事にした。

 千咲希が広げた折り畳みの傘を、匡は無言で奪い取り「行くぞ」と顎で合図する。千咲希は笑顔で頷くと、二人は並んで歩き出した。
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