雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
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 帆鷹から傘を借りて帰った穂香は、自室のベッドで枕を抱きかかえながら、帆鷹との出来事を思い返していた。

 何があったわけでも、特別な話をしたわけでもないけれど、帆鷹と一つの傘に入り、並んで歩いた事を思い出すだけで、顔が火照ってしまう。

 穂香は寝返りを打ちながら、その顔を枕に埋めた。

 明日、帆鷹に借りた傘を返さなきゃいけない。帆鷹と話せる口実があるというだけで、何だかとても嬉しくなる。そしてまた思い出される二人きりの帰り道。

 帆鷹の横顔、時々触れた肩……。

 近付けた様な気がする距離に、じわじわと胸の中に広がるのは、ほわほわとした幸せな気持ち。

 穂香は顔を埋めたまま、枕をギュッと抱きしめた。
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