雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「昨日ね、九条に傘を借りて帰ったんだけど……。返すタイミング、なかなか計れなくて……」


「それで朝からずっとソワソワしてたんだ?」


「えっ? そんなにソワソワしてた?」


「してた。でも、それ訊いて納得した」


「『納得した』って?」


 キョトンとする穂香に、千咲希は耳打ちする様な声で言う。


「穂香がすっごく九条くんを好きな事」


 フリーズした穂香の顔が、みるみる真っ赤になり、ハタと気付いて顔を両手で覆いながら悔しがる。


「いきなり極論言わないでよー!!」


「ごめんごめん」


「自分で認めてても、人に言われると恥ずかしい」


「何か……穂香が羨ましいなぁ」


 聞き捨てならない千咲希のセリフに、穂香が顔を上げた。
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