雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「『羨ましい』って! 千咲希には関根っちっていう彼氏がいるじゃん!! 片想いのアタシからしたら、そっちのが全然羨ましいし」


「そうなんだけど……」


 相槌を打ってみたものの、千咲希はその先の言葉が浮かばない。好きな人の話に恥じらう穂香を見て、不意にこぼれた言葉だった。


「関根っちとケンカでもした?」


「ううん。ケンカするほど会えてないし……」


「あっ、そっか。同じ学校の同じクラスって事が羨ましかったわけね?」


 得意気な穂香に「そうじゃない」と言うのも気が引けて、千咲希は軽く頷いてみせた。けれど、それは建前で……。気が引けたわけじゃない。「そうじゃない」と言ったところで、またその先の言葉が、見つからなかったから。

 そんな自分のよくわからない気持ちに、千咲希は心で小さな溜め息をついた。
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