雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
結局、帆鷹に傘を返しそびれたまま、穂香は放課後を迎えた。部活に行く準備を整えて教室を見渡すと、帆鷹の姿がない。帆鷹と仲のいい新太が別のクラスメートと談笑しているのを見つけて、穂香はそこに駆け寄ると訊いた。
「新太、九条どこ行ったか知らない?」
「バイトだからって、今さっき帰ったけど?」
「ありがと」
言うが早いか、穂香は借りた傘を手に教室を飛び出すと、生徒玄関へ向かう。ちょうど玄関を出て行く帆鷹の背中を見つけて、穂香は内履きのまま追いかけて呼び止めた。
「九条」
穂香の声に足を止めた帆鷹が、無言で振り返る。
「これ、昨日はありがと」
「ああ……」
帆鷹はポーカーフェイスでそれを受け取ると、そのまま歩いて行ってしまった。
あまりに素っ気ない帆鷹の言動に、浮かれ気味だった穂香は、ハンマーでガツンと殴られた様な衝撃を受けて立ち尽くす。
もともと九条帆鷹は、そういう奴だ。わかっている。わかってはいるけれど……。
昨日とは打って変わった夕暮れの空の下、穂香は小さな溜め息をこぼすと、踵を返して教室に向かった。
「新太、九条どこ行ったか知らない?」
「バイトだからって、今さっき帰ったけど?」
「ありがと」
言うが早いか、穂香は借りた傘を手に教室を飛び出すと、生徒玄関へ向かう。ちょうど玄関を出て行く帆鷹の背中を見つけて、穂香は内履きのまま追いかけて呼び止めた。
「九条」
穂香の声に足を止めた帆鷹が、無言で振り返る。
「これ、昨日はありがと」
「ああ……」
帆鷹はポーカーフェイスでそれを受け取ると、そのまま歩いて行ってしまった。
あまりに素っ気ない帆鷹の言動に、浮かれ気味だった穂香は、ハンマーでガツンと殴られた様な衝撃を受けて立ち尽くす。
もともと九条帆鷹は、そういう奴だ。わかっている。わかってはいるけれど……。
昨日とは打って変わった夕暮れの空の下、穂香は小さな溜め息をこぼすと、踵を返して教室に向かった。