雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「気になるって事が、好きの始まりだろ」


 悠李は那子の方に視線を動かしてから、律樹の方に向き直る。


「しかしなんでまた、桜川? 律のタイプってああいうのなわけ?」


「タイプとかじゃない。ただ、思ってたイメージとかけ離れてるって言うか」


「あぁ、確かにな。バリバリのヤンキーかと思ったら、そうでもない」


「そうなんだよな……それに」


 那子がピアノを弾いていた事と、電車で痴漢にあった事を思い出したが、律樹はこれは黙っておこうと口をつぐんだ。


「それに?」


「なんで急に、教室で授業受ける気になったのか」


「だよなぁ。ま、あれだ。つまるところ、桜川那子のギャップにやられたってやつ?」


「いや、やられたとかじゃなくて……」


「なんなら、俺が桜川にそれとなく探り入れてみようか?」


「断る」


「硬派だねー」


 ――恋。自分は恋をしてしまったのか? 

 悠李に言われて否定はしたものの、実際よくわからない。律樹が那子の方を見た時、一瞬目が合ったが、すぐに逸らされてしまった。 
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