雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「そう? 正反対だから逆に合うのかも」


「あー、そっか。そうかも」


 那子はそっと律樹の方を盗み見たが、何やら悠李と話し込んでいる様子だ。


 ピアノを弾いているところを見られていたのは、恥ずかしかったけれど『別れの曲』が好きだと言っていた事。電車の中で痴漢からかばってくれた事。そんな事を思い出すと、顔が熱くなる。これは、やはり好きという事なのだろうか。

 ふと律樹と視線が合ったが、すぐに逸らしてしまった。ダメ、恥ずかしい……。


「ねぇ、那子。聞いてる?」


「あ、うん」


 そこへ教室へ入ってきたリーダー格の女子が、那子の椅子をわざと蹴ったが、那子は素知らぬ顔で夏成実と話を続ける。
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