雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「あ、そうそう。昨日、お兄ちゃんが帰って来たらね……」


 今日三回目の、萌果のお兄ちゃんエピソード披露。伊万里も、毎日聞かされる事に慣れてきた。


「萌果の分も、お菓子買ってきてくれてたの」


「優しいね」


「でしょでしょ?」


 萌果以外の人と話す事にも、慣れていかなくてはいけないとわかっている。このままじゃいけない事も。

 伊万里が初めて、自分から話してみたいと思った人。それが、ライブの時のエビ高生だった。彼と話をする事が出来たら、何か変われそうな気がして。別れ際の『またね』と言う言葉を、心のどこかで信じていた。
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