雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
この時はまだ誰も気付いてはいなかった
 期末テストを一週間後に控えた放課後。一年一組の教室では数人の男女グループが、カラオケに行こう! と盛り上がっている。その中には功もいて、帰ろうとする匡に声を掛けた。


「なぁ、これから匡もカラオケ行かね?」


「パス」


「テスト前で部活休みだろ? 行こうぜ?」


「自主練すっから」


 匡は功の顔も見ずに言ってのけ、そそくさと教室を出て行く。その後ろ姿を見送るでもなく見送って、功はグループを振り返った。


「んじゃ、このメンツで行こうぜ」


 功を含めて男子三人、女子二人。五人でぞろぞろと教室を出て、生徒玄関に向かう。

 靴を履き替え、校門に向かって歩き出したところで、グループの男子が言った。


「あれって、西華(せいか)の制服じゃね?」


 功が何気ない視線を校門前に向けると、西華高校の制服を着た女子生徒がポツンと立っている。小さくて華奢な体に、サラサラのボブヘア。


「花梨(かりん)!?」


 功の口からこぼれた名前に、グループの視線が一斉に功へと向いた。
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