雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
「とりあえず俺、レジ行ってくるから! ここで待ってて? 絶対、待っててよ?」


 男子生徒はしきりに振り返りながらレジへと向かい、伊万里は素直にそこで待つ事にする。緊張はしているけれど、なぜか不安はなかった。


「ごめん、お待たせ!」


 伊万里と同じ特典のポスターを持って、戻ってきた男子生徒は頭を掻きながら言った。


「立ち話もなんだから、お茶でもどう? あ、でも、テスト前だよな。大丈夫?」


 伊万里は頷き、後ろについて歩く。男の人と二人でお茶を飲むなんて、生まれて初めての事だ。しかも名前も知らない、たった一度会った事があるだけの人と。

 伊万里自身が、この状況に一番驚いていた。
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